第3回ヘルスケアベンチャー大賞 実行委員会委員長
日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長
坪田 一男
(株式会社坪田ラボCEO)
だいぶCOVID19も落ち着いてきましたが皆様お元気でお過ごしでしょうか?2017年に設立されからイノベーション委員会はおかげさまで順調に活動を続けており、本年2021年の11月に第3回ヘルスケアベンチャー大賞を無事WEBで行うことができました。委員会メンバー、審査委員、登壇者ら関係者だけが日本橋のLINKJビルに集合しあとはすべてWEB配信という形としました。一時はハイブリッド開催も考えましたが、まだCOVID19が収束していないということからWEBだけとなりました。しかしながら例年より参加者も多くなりWEB開催のプラスの点もうまく使い切れたと思います。来年の第4回ヘルスケアベンチャー大賞はぜひともハイブリッドの形で現場ももりあがる!!、WEB上でもみなさまがお聞きいただけるという形にできればと思います。
報道でもお聞きのようにCOVID19のワクチン接種は順調に進んでおり国内の感染は減っておりますが、すべてワクチンは海外製となっています。毎年の医療費医療機器の輸入超過問題は昨年の4兆円を大きく超えて、今年はワクチン分(日本人全員が2回やる計算だとかなりの数となります)も上乗せすると4兆8000億円くらいになるのではないかと危惧されています。今こそワクチン開発や、予防医学に基づいたヘルスケアイノベーションが必要な時代です。日本抗加齢医学会の会員、評議員、理事の先生にはワクチン開発に挑戦したり、あたらしいサプリ、医療機器の開発を真剣にやっておられる方が多数おられます。とても頼もしい限りです!!我々イノベーション委員会としてはぜひこの流れを加速させていただければと考えています
本年の開催にあたりましてはヘルケアベンチャー大賞事務局長、バイオ・サイトキャピタル株式会社の福田伸生様、学会事務局長の中村智子さん、委員会メンバー、そして協賛企業の皆様の強力なサポートのおかげです。この場を借りてお礼申し上げます。
ヘルスケアベンチャー大賞事務局
福田 伸生
(バイオ・サイトキャピタル株式会社)
第3回ヘルスケアベンチャー大賞を終えて
昨年に続き、最終選考会はオンライン開催となりました。今年も私は企画から携わることができ、最終選考会では司会を務めさせていただきました。まだ人類はCOVID-19の試練を乗り越えてはいませんが、ワクチンや治療薬の開発は、イノベーションが生み出す製品の凄さやそれを市場投入するまでのスピードの大切さをまざまざと見せつけてくれました。ヘルスケアベンチャー大賞も、イノベーションを体現すべく頑張っている多くの皆様の支持を得て、第3回を開催できました。オンライン配信に240人超の方々が事前登録され、ベンチャーキャピタルや証券会社の皆さんに加えて、多くの製薬会社の方々にも視聴いただきました。ポストコロナを見据えたDXやビッグデータの活用など、製薬産業は総合健康産業へと変貌しつつあり、事業分野としてのアンチエイジングへの関心も高まっているのではないかと感じております。
さて今回の特長は、応募のレベルが総じて高いことです。どんなに立派な研究成果も社会実装するためにはいくつかハードルがありますが、なかでも顧客ニーズは重要であり、誰がどのような製品・技術・サービスを求めているのかを十分に問いかけながら事業化を進める必要があります。大賞を獲得されたiMU株式会社をはじめ、「想定する顧客や提供できる価値をきちんと見定めながらビジネスモデルを構築する」という経営の基本を踏まえた応募が、前回に比べ増えていると実感しました。
さて、次回はポストコロナの試みとして、ハイブリッドでの開催が出来ればと願っております。アンチエイジングが開く明るい未来を信じて、引き続きヘルスケアベンチャー大賞へのご理解を賜り、皆様からの多くのご応募をお待ちいたします。
第3回ヘルスケアベンチャー大賞 審査委員長
堀江 重郎
(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授)
第3回のヘルスケアベンチャー大賞を受賞されましたiMU株式会社様をはじめ、各賞に輝かれた企業の方々、そして個人の方々、大変おめでとうございます。
日本抗加齢協会・日本抗加齢医学会のヘルスケアベンチャー大賞は回を重ねるごとに、非常に中身が濃いものになってきたなということを実感しております。
その中で今年は非常に完成度が高い、しかも臨床の中の課題からこれを起業化された会社が大賞となられたということで、名実共にヘルスケアベンチャー大賞も意義が高まってきたと、大変嬉しく思っております。
このヘルスケアベンチャー大賞は必ずしも、完成された既にある商品をお持ちの方、あるいはそういった企業だけではなく、シーズの段階でも是非応募いただいてその素晴らしいアイデアをぶつけてみるということも期待されております。
来年の6月開催、第22回日本抗加齢医学会総会において、このヘルスケアベンチャー大賞の企業展示等ございますので、ぜひご関心ある方にご参加いただければと思います。
改めて、受賞されました各社そして個人の方々、おめでとうございました。
◇大賞(企業)
iMU株式会社 / 発表者:名倉 武雄
「ウェアラブルセンサーによる膝痛対策ツールの開発」
この度、第3回ヘルスケアベンチャー大賞・大賞をいただきました。改めてお礼申し上げます。会社・個人とも非常にレベルの高いメンバーの中から、当社が選出され喜びというよりは驚きが大きかったというのが本音です。特にIPOを目指しすでに売り上げ・実績があるスタートアップが複数あった中で我々が受賞するというのは、予想もしなかった結果でした。他方、我々のシーズについての実現性・将来性を評価いただいたものと理解しました。アーリーステージのスタートアップでも、アイデア・夢そして熱い思いを伝えられれば大賞がとれるんだという例となれて本当にうれしいです!
2020年2月に自分とCOOの崎地氏と起業し、色々な仲間に支えられながらプロトタイプの完成までたどり着きました。会社としてはまだまだ駆け出しですが、膝OAの国際診断基準を作るという高い目標にむかって走り続けたいと考えています。そんな折に本大賞を受賞させていたいたことは大きな励みになりました。仲間たちとこの喜びを分かち合いたい思います。
◇学会賞(企業)
ペリオセラピア株式会社 / 発表者:谷山 義明
「化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌への新規治療法の開発」
この度は第3回ヘルスケアベンチャー大賞・学会賞をいただきありがとうございました。新薬の開発はとてもお金のかかる仕事であるだけでなく、成功する確率が低いと考えられています。その中で、勝負するには、ベンチャーを立ち上げるしかないと考えて意を決したのが3年前になります。あっという間に3年が経ちました。なんとかこれまでは、投資を獲得することができていますが、これからがより大変大きな壁が待っていると思います。
今回の受賞で弾みを付けて、再度前に突き進みたいと思います。
第3回ヘルスケアベンチャー大賞・学会賞ありがとうございました。
◇ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞 (企業)
あっと株式会社 / 発表者:武野 團
「非侵襲指先皮下毛細血管スコープによるCapillary Function Index!」
この度は、栄えある第3回ヘルスケアベンチャー大賞・ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞受賞に選定頂き、誠に有難うございます。
弊社は世界中の人の健康を見守ることをミッションとしたヘルスケアスタートアップです。毛細血管スコープおよびクラウドベースのビッグデータ分析・解析技術による、生活習慣病予防を目的としたICTシステム製品・サービス事業の開発(毛細血管スコープシステム関連特許①特許第6186663号②特許第6379374号③特許第6551729号④特許第6906188号)を行っており、生活習慣病の新しい健康検査・管理法の確立を目指しております。
2014年に大阪大学医学系研究科との共同研究により毛細血管の定量化に成功し、2016年NHKガッテン“アンチエイジングの新常識 毛細血管ケアSP”、2019年NHKスペシャル“ゴースト血管が危ない”などの番組で高視聴率を記録し、認知が高まってきたことと合わせて、基礎研究で脳・骨・皮膚・眼の機能維持に毛細血管が重要な役割を行っている事がわかってきております。臨床研究で理化学研究所と血液検査結果との相関や、東北大学眼科学教室より日本緑内障学会にて、緑内障患者は健常者と比べて毛細血管の本数と長さが半分以下だったことで、毛細血管測定が有用であるとの発表が行われました。
毛細血管脆弱性をCapillary Function Indexとして昇華させるべく、近畿バイオインダストリー振興会議と毛細血管ラボ社会実装コンソーシアムを立ち上げ20社以上の製薬企業などに参画頂き、毛細血管が改善する健康食品・サービスの検証が進んできており、2025年大阪・関西万博に貢献できる様に社会実装を行う所存です。その先には日本発の健康指標として、毛細血管改善ソリューションとともに海外への展開を見据えております。
ヘルスケアベンチャー大賞の審査プロセスを通じ、審査員・関係者の方々から、多くの激励・応援のメッセージを頂けたこと、本当に心強く感じました。この素晴らしいイベントに参加できたことを心から感謝するとともに、今後とも多くの科学者の方々にお力添えを頂きながら、ビジョンの実現に向けて邁進していきたいと思います。
株式会社サイキンソー / 発表者:沢井 悠
「腸内フローラからアプローチするスマート生活習慣病対策事業」
このたび、「ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞」という栄えある賞を頂き、大変嬉しく思っております。受賞ののち早速、各方面より「受賞おめでとうございます。」との声を頂くことができ、改めて抗加齢医学会様の活動の大きさと、受賞の重みを噛みしめているところでございます。
さて、当社が事業としているのは個人が利用できる手軽な腸内細菌叢検査ですが、腸内に多数の菌が住み着いていることは、今から100年以上前には既に知られておりました。その中には、人工的に培養増殖させる方法論が確立され、プロバイオティクスとして利用される有用菌も存在しています。その一方で、個人個人が体内に住まわせている菌そのものについて、実際に計測しヘルスケアへ応用しようとするサービスは長い間、登場しておりませんでした。
腸内細菌叢を個人が利用できる検査として実用化しようとする際の大きなハードルとなるのが、その個人差の大きさです。長きにわたり、個人差を超えて集団的な特徴を見出すことができる技術は登場せず、体内の腸内細菌叢は未開の大陸として存在していました。そのフロンティアを切り拓く大きな力となったのが、ゲノム解析技術の応用による細菌叢全体の解析技術と、データサイエンスの発展による大規模データ解析です。当社は苦労の末、これらを組み合わせた腸内細菌叢の評価スコアリング技術を開発し、現在、検査サービスへ実装しております。
当社の更なる挑戦は、大規模データが持つ力を最大限に活用しながらも、個人を個人単位のまま解像度高く把握し、一人一人にパーソナライズされた疾患予防法を提供する画期的なプロダクトを開発することにあります。ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞の名に恥じぬよう、テクノロジーの力によって、次世代のスマート生活習慣病体対策法を構築していこうと決意を新たにしております。
株式会社トニジ / 発表者:小橋 英長
「緑内障患者向け家庭用自己測定眼圧計の開発・事業化」
この度は、栄えある第3回ヘルスケアベンチャー大賞・ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞に選出頂き、誠に有難うございます。
株式会社トニジは、2020年3月に創業した自己測定眼圧計タップアイを開発中のスタートアップです。現在、私とエンジニアで二人三脚にて進めております。これまで、公的研究費のサポートで機器開発とメインに実施しております。タップアイを医療機器クラスⅡでの認証登録を目指しており、今後は薬事面、上市に向けた製販体制面に注力して参ります。
昨今のコロナ禍では、不要不急の受診を控える患者が増えております。眼科医療においても同様であり、もし緑内障治療が遠隔で可能になれば、それを望んでいる患者において新しい通院・治療の選択肢が増えていくことが期待されます。若年・中年患者は、遠隔医療へのアクセシビリティが高いため、自宅・職場で眼圧計測が可能になれば、遠隔で医療機関との情報共有や相談できるようになります。それを後押しするのが、本眼圧計タップアイであります。代表の小橋英長は、眼科専門医であり緑内障診療にあたっていますが、多くの患者さんより「体温計みたいに自宅で測れる眼圧計があると便利です。」という意見を耳にします。我々のタップアイは、緑内障患者さんのニーズを充足できるソリューションになると考えております。
2年前のヘルスケアベンチャー大賞には、個人で出場致しました。その後、創業してこの度参戦致しました。審査員や関係者の方々より、多くの激励やアドバイスを頂戴して、貴重な経験を得ることができました。本学会員の方々におかれましては、研究内容や知財を社会実装するために、起業することを選択することを是非お勧め致します。
将来的にヘルスケアベンチャー大賞のファイナリストから、日本・世界を牽引するリーディングカンパニーが誕生することを期待しております。
◇最優秀アイデア賞 (個人)
首藤 剛(熊本大学大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター)
「Cエレガンスを用いた健康寿命の指標化で挑む 新(ネオ)LIFESPAN革命!!」
この度は第3回ヘルスケアベンチャー大賞選考会にて、個人の部で最優秀アイデア賞に選出して頂きましたこと、心より御礼申し上げます。
現在、日本人の平均寿命は、女性87.14歳、男性80.98歳 (2016年) であり、人生百年時代に突入しようとしています。一方、自立した生活を送れる期間「健康寿命」に関しては、男性72.14歳、女性74.79歳 (2016年) であり、平均寿命より約9〜12年も短いです。しかも、日本人高齢者の中で、男性で約20%、女性で約12%に相当する集団では、健康寿命が平均より10歳程度も短いです。つまり、健康寿命の延伸社会を目指すためには、寿命の平均値ではなく、寿命の質の異なる集団の変化を議論することが重要です。
私は、5年前に開始した熊本大学地域エコシステム事業UpRodにて、プロジェクトマネージャーに就任し、製薬・健康関連企業100社以上との面談を経て、ウィズコロナに必要な社会実装化目線を醸成してきました。一方、2019年に参加した、抗加齢医学会にて、健康について興味を持つようになり、「人々が100歳までピンピンコロリで生き抜くために必要なものは何か?」という思いで、今回の提案に至りました。
遊び心も多少ありましたが、「実験動物Cエレガンス(線虫)で健康寿命を測る!?」という斬新な着想で、結果として、これまで誰も成し遂げることのできなかった「健康寿命の見える化」の新技術C-HASができました。C-HASの開発では、独自のノウハウを培うことが重要でした。結果、ベネフィット(客観性、測定時間、同時測定検体数など)とユニークさ(評価方法、ミニ集団解析など)を兼ね備えた技術へと深化させることができました。
最後に、本審査会への参加によって、「いかに良い技術を持っていても、それを、皆と共有するための発信力と行動力がないと世の中は動かせない」ことを学ばせていただきました。大学での「基礎研究」は重要ですが、「社会実装」との両利き経営が可能になると、人生の楽しみも倍増します。ぜひ、多くの加齢医学関連の皆様方に、本大賞へチャレンジしてもらいたいと思います!
最後に、本受賞に心より感謝すると共に、今後も、C-HASの有する多方面展開のポテンシャルによって、人々の新(ネオ)LIFESPAN革命を引き起こしていきたいと思いますので、ご支援ご協力をよろしくお願いします。
◇アイデア賞 (個人)
藤本 千里(東京大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野)
「ノイズ前庭電気刺激によるバランス改善治療」
この度は、第3回ヘルスケアベンチャー大賞・アイデア賞に選出して頂き、身に余る光栄に存じます。日本抗加齢協会・日本抗加齢医学会の関係者の皆様、ヘルスケアベンチャー大賞選考委員の皆様に厚く御礼申し上げます。
私は現在、耳鼻咽喉科医として大学病院で勤務しております。専門分野は、めまい平衡医学、神経耳科学であり、主として、耳が原因のめまい・平衡障害の臨床および研究に従事しております。本研究は、耳性(前庭性)の難治性平衡障害の治療機器を開発し、めまいに悩む患者さんに新しい医療を届けることを目指しております。耳性めまい疾患は新規治療法の開発が非常に難しい領域であると考えられており、臨床応用を目指した研究を進めるにあたり、慎重な意見もありました。しかし、私は臨床医として患者さんの治療につながる研究をしたいという強い思いがあり、上司である先輩医師に薬事承認の取得を目指す方向性につき相談しましたところ、賛同され研究を継続することができました。現在、様々な方面からのご協力により、pivotal studyを行う段階まで至っております。本研究に関わるすべての皆様に心より感謝申し上げます。
私はこれまで、自分の専門分野に近い方々に向けて研究成果を発表することは多くあったのですが、今回の審査会では、様々な専門分野の方々に向けてプレゼンテーションをする機会を頂けました。私どもの研究をより広く知って頂くことができたのではないかと思います。さらに、他の受賞された方々の研究のアイデアや取り組みを学ぶこともできました。審査会で得た経験を、今後の研究活動に生かしていきたいと考えております。
また今回、このような素晴らしい賞を頂きましたことは、私ども研究グループ全体の励みともなっております。私自身も、より一層研究活動に日々邁進したいと存じます。今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
山下 積穂(つみのり内科クリニック)
「人生100年時代の健康づくりを学ぶりんご教室」
この度は、第3回ヘルスケアベンチャー大賞、個人の部でアイディア賞を頂き、誠に有難うございます。
iPhoneなどのデバイスは確かにイノベーションをおこしましたが、私は、それを使いこなす我々の意識、特に健康意識を高めることももう一つのイノベーションだと思っています。そして「毎日、体内では、りんご1個程のつくりかえを行って生きている」ことを学ぶりんご教室を、日本中の人に届け、「自ら、人生100年時代を創造しよう」という意識へ変革したいと思っています。
開業前に抗加齢医学にふれたことで、自身の開業スタイルが大きく変わりました。17年前の当時は、抗加齢医学は面白いけれど、現場ではいったい何をすればいいの?といった状況だったのですが、循環器だったこともあり、食事と運動を一緒に改善するスタイルは、今後、当たり前になるだろうと、何故か確信めいたものがありました。病気を治すというより、元気を増やしていくスタンスです。
そのため、当初はスタッフにも地域住民にも理解されず、ましてや料金を支払ってまで健康教室をうけるというところまで、簡単にたどりつけませんでした。でも最終的に、予防は教育だなという軸は揺らがなかったので、淡々とりんご教室の改善と普及に取組みました。そうやって、りんご教室は進化し、受講者の意識をかえるレベルにまで到達しました。
最終審査会では大賞をねらったのですが、他のプレゼンターはそうそうたるメンバーでしたし、バックグランドがしっかりしており圧倒されてしまいました。その一方、一開業医の立場でここまで作り上げてきたという自負も感じることができました。次回は、社会実装チームを構成し、企業として参加し、大賞を目指したいと思います。
日本では、最先端を極めるシステムや優秀な人材は多くいますが、それを地域へ還元する仕組みや環境は未だ不十分なままだと感じています。その役割を担うのは、治療医学を経た開業医だからこそできることであり、自身の医療スタイルにりんご教室を足すことで、21世紀型の地域医療に進化すると思っています。最後に、抗加齢医学情報を生活現場に浸透させるりんご教室を受けて初めて、住民は「私は、もう大丈夫」と、安心と希望の中で、人生100年時代を生きていく事が出来ます。このりんご教室を広めるために、これから多くの先生とつながり、健康創造社会を構築したいと思っています。
第3回ヘルスケアベンチャー大賞は、昨年に続き、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている最中ではありましたが、多くの応募をいただきました。ご応募をいただきました各位へ心より御礼申し上げます。
先日衝撃的なのニュースがありました。GAFA (Google,Apple,Facebook,Amazon)の合計株式時価総額が7兆500億ドル (約770兆円)に達し、日本企業全体 の 6兆8,600億ドル (約750兆円)を超過したのです。1989年末には日本の株式市場はピーク値を迎え、時価総額は世界全体の市場の半分以上を占めていました。わずか30年、されど30年で世界は大きく変わりました。
今、日本では新型コロナウイルスの感染は我々の想像をはるかに超え拡大し続けています。経済活動の停滞は長期間となり、デジタル化の遅れも顕著です。社会のシステムや世界の価値観が大きく変わる中、あらゆる産業のイノベーションは待ったなしといった感じです。新たなスタートアップやベンチャー企業を興すのは容易なことではありません。数年後、存続し成長できる企業もわずかだと思います。しかし、行動を起こさないと何も出来ないのもまた事実です。私たちは、このヘルスケアベンチャー大賞事業を通じて、ヘルスケア分野のイノベーション企業、人を応援したいと思います。
皆さん方も是非、最終審査にご参加いただき、ファイナリストのチャレンジを応援していただければ幸いです。
2021年9月6日
実行委員会委員長
日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長
株式会社坪田ラボCEO 坪田 一男
書類審査、1次審査を経て、以下8組が、最終審査会への出場するファイナリストに決定しました。
9月6日(五十音順)
あっと株式会社 / 非侵襲指先皮下毛細血管スコープによるCapillary Function Index!
毛細血管スコープの頒布に向けたプロトタイプ開発、毛細血管スコープおよびクラウドベースのビッグデータ分析・解析技術による、生活習慣病予防を目的としたICTシステム製品・サービス事業の開発を行っている。これにより、生活習慣病の新しい健康検査・管理法の確立を目指す。
iMU株式会社 / ウェアラブルセンサーによる膝痛対策ツールの開発
多くの人が経験する膝痛に対し、膝の悪さの指標となる膝内反モーメント(KAM)を簡易に計測できるツールを提供する。単一の加速度センサーを膝に装着し、5m程度歩行することでKAMの計測を実現した。本ツールはクラス1の医療機器として1回250点(2500円)を算定可能で、診療所・病院におけるレンタルビジネス事業を開始する。
株式会社サイキンソー / 腸内フローラからアプローチするスマート生活習慣病対策事業
人体の腸内フローラのDNA検査サービス「マイキンソー」を提供し、サービスを通じて収集した大規模腸内細菌叢データプラットフォームを用いて次世代の生活習慣病対策技術を開発する。検査を利用する個人に対しては腸内フローラの個人レポートを提供し、事業者やアカデミアなどのパートナーに対しては、食材やライフスタイルが人体および体内の細菌叢にもたらすエビデンス情報を提供するプラットフォーム型の事業を展開する。
株式会社トニジ / 緑内障患者向け家庭用自己測定眼圧計の開発・事業化
既存の20分の1の価格帯で測定できる眼圧測定機器を開発している。顧客は本機器のエンドユーザーである緑内障患者とする。ゆくゆくは血圧計のように家電量販店でも眼圧計が流通する時代を目指している。またオンライン診療との親和性が極めて優れており眼圧データを医師と患者が共有できるため、オンライン緑内障診療と相性が良く、欠かせない医療機器となる。
ペリオセラピア株式会社 / 化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌への新規治療法の開発
化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌は予後は極めて悪く、かつ子育て世代の40歳以下の女性に頻発するアンメットニーズの高い疾患である。この原因に上皮間葉転換が考えられていることから、多数の臨床検体から間葉系マーカーと最も相関する因子としてペリオスチンを見出し独自に中和抗体を作成し、2年後の臨床研究の準備を進めている。
首藤 剛 (熊本大学) / Cエレガンスを用いた健康寿命の指標化と天然資源で挑む新(ネオ)LIFESPAN革命!!
有名な実験動物、Cエレガンス(線虫)を活用した健康寿命の「見える化(指標化)」の新技術C-HASで、未知なる可能性を秘めた天然資源の中から、老化に歯止めをかけ未病を維持する新・真の抗老化成分を発見する。将来的には、C-HAS技術をハブとした新規健康事業の集積(C-HAS-Hub)を図り、人々の寿命と健康寿命に差がない世の中、いわゆる、ピンピンコロリ社会の実現に向け、新LIFESPAN革命を起こす。
藤本 千里(東京大学) / ノイズ前庭電気刺激によるバランス改善治療
前庭障害による体のバランス障害に対する革新的な治療法開発が望まれている。耳後部に微弱なノイズ電流を流し前庭系を刺激(ノイズ前庭電気刺激, nGVS)することにより、前庭障害患者および高齢者のバランスが改善することを報告し、現在、重度のふらつきを有する前庭障害患者に対する携帯型刺激装置のバランス改善効果に関し、検証的治験を行っている。
山下 積穂(つみのり内科クリニック) / 人生100年時代の健康づくりを学ぶりんご教室
人は「自分がどのように年をとるか」を知ると、その対処法を知りたくなる。さらに「日々、体をつくりかえている」ことを知ると、「何をどうすればいいか」を知りたくなる。りんご教室は、抗加齢医学情報に教育手法を取り入れた健康教室で、「抗加齢医学を知る」→「ワクワクする」→「やってみる」→「変化を感じる」→「続ける」→「効果を感じる」→「さらに続ける」→「自立する+人に勧めたい」を生みだしている。
ファイナリスト企業5社は日本抗加齢協会認定ベンチャーとなります。
ファイナリストには、今後個別に最終審査会までのご案内をさせていただきます。
Cエレガンスを用いた健康寿命の指標化と天然資源で挑む
新(ネオ)LIFESPAN革命!!
現在、世の中は空前の健康志向ブームです。しかし、健康寿命の研究は、ヒトや高等モデル動物の活用に依存しており、容易ではありません。
一方、健康社会の一助となる健康食材・サプリメントは、その機能性がわかっていても、”直接的な”健康寿命延伸能力については、一貫した評価基準がありません。
私は、ヒトの生き様に相同性が高く信頼性の高い実験動物、Cエレガンスを活用した健康寿命の見える化(指標化)の新技術C-HASを開発しました。C-HASの活用で、老化に歯止めをかけ未病を維持する新・真の抗老化成分を発見する事ができるとともに、企業等が有する既存資源の健康延伸力評価の評価が可能となり、健康志向型の企業や消費者のニーズに応える、全く新しい健康事業となります。将来的には、C-HASをハブとした新規健康事業の集積を図り、人々の寿命と健康寿命に差がない世の中の実現に向け、ネオLIFESPAN革命を起こしたいです。
ノイズ前庭電気刺激によるバランス改善治療
私達は、耳に痛みを感じない程度の微弱なノイズ電流を流し内耳前庭系を刺激する、ノイズ前庭電気刺激(noisy galvanic vestibular stimulation, nGVS)の研究を行っております。
耳に電気を流す手法は、従来、体のバランスについての研究や検査に用いられていましたが、私達は、バランス障害の「治療」への展開を進めております。これまでの臨床試験にて、前庭障害患者および高齢者のバランスがnGVSにより改善することを報告しました。
現在、重度のふらつきを有する前庭障害患者に対する携帯型nGVS刺激装置のバランス改善効果に関し、検証的試験を行っております。nGVSは痛みを伴わず、手術を必要としない低侵襲的な治療法であり、高齢者のバランス障害への効果も見込まれます。
私達は、アンメットニーズである前庭障害に起因する難治性のふらつきの解決を目指すとともに、アンチエイジングにも貢献したいと考えております。最終審査では、nGVS研究の成果と今後の展開についてお話しさせていただきます。
人生100年時代の健康づくりを学ぶりんご教室
りんご教室では細胞モデルを使い、食事・運動・ストレスの抗加齢医学情報を学び、受講者に「だれもが毎日、りんご1個程の細胞を作りかえている」ことの気づきや希望を与えている。それに段階的教育手法も取り入れ、おもしろい→腑に落ちた→やってみようを繰り返すことで、「日々、健康をつくりだし、自身の人生100年を全うしよう」と、自立と意識変革をおこす新しい健康教室である。
一方、医療者は、2か月受講のメタボ離脱率24%や認知症の推定MMSE値改善効果(日置市高齢者230人の90%が改善)、医療費適正化(国保医療費、一人当たり年6万円減少を示唆)を知ると、眼前の患者に教え、サポートしたくなる。それを見た医師は、この教室を自身の医療スタイルの実現手段として活用したくなり、今回、りんご教室を横展開する事業を始めている。
多くの医師がりんご教室を取り入れると、日本の21世紀型予防医療が現実となり、日本が変わる。
非侵襲指先皮下毛細血管スコープによるCapillary Function Index!
あっと社では毛細血管スコープおよびクラウドベースのビッグデータ分析・解析技術による、生活習慣病予防を目的としたICTシステム製品・サービス事業の開発を行っており、生活習慣病の新しい健康検査・管理法の確立を目指しております。
基礎研究で脳・骨・皮膚・眼の機能維持に毛細血管が重要な事がわかってきおり、臨床研究で理化学研究所と血液検査結果との相関や、東北大学眼科学教室より日本緑内障学会にて、緑内障患者は健常者と比べて毛細血管の本数と長さが半分以下だったことで、毛細血管測定が有用であるとの発表が行われました。
毛細血管脆弱性をCapillary Function Indexとして昇華させるべく、近畿バイオインダストリー振興会議と毛細血管ラボ社会実装コンソーシアムを立ち上げ20社以上の製薬企業などに参画頂き、毛細血管が改善する健康食品・サービスの検証が進んできており、万博に貢献できる様に頑張ります。
ウェアラブルセンサーによる膝痛対策ツールの開発
日本では患者数が2000万人を超えるとされる変形性膝関節症のデジタルバイオマーカとして、膝内販モーメント(KAM)が提唱されてきた。しかし、KAMの計測には高額なモーションキャプチャやスペース、体表マーカーの貼り付けなど煩雑な作業が必要で、病院やクリニックで簡易に計測できる手法が求められていた。
iMUではたった1つの加速度センサーによりKAMの簡易な推測を実現し、社会実装を目指している。膝が痛くても8割近くの人が病院を受診せず、自己流で対処している事実もある。
iMUの技術により、膝痛に対する明確な医療コンサルトや介入指標を提供し、いつまでも元気に歩ける社会を実現することを目指している。
腸内フローラからアプローチする
スマート生活習慣病対策事業
「腸内フローラからアプローチするスマート生活習慣病対策事業」は、当社が保有する40,000件以上の腸内フローラ検査データを活用し、新たな予防医療のためのプラットフォームを構築する取り組みです。
当社の主力検査事業である「マイキンソー」で分かる腸内フローラ情報を出発点に、日常生活、ライフスタイルから健康状態を見直すきっかけを作ります。特に食習慣や運動習慣の評価に有効なため、真の意味での未病ケアにつながるポテンシャルがあると考えます。
また、個人別レシピの最適化、機能性食品、フードデータの活用など、最近盛り上がりを見せている様々なフードイノベーション領域と親和性が高く、多数の事業者と連携できる可能性があることも当社のアピールポイントです。
株式会社サイキンソーは「細菌叢で人々を健康に」を実現する腸内フローラデータのリーディングカンパニーとして、次世代のヘルスケアサービスを創出・推進してまいります。
緑内障患者向け家庭用自己測定眼圧計の開発・事業化
緑内障は我が国における失明原因の上位を占める。眼圧を降下させることが唯一の緑内障の治療とされており、点眼薬が使用されるが、眼圧には日内変動があり適切なタイミングでの点眼が難しい。
もし患者が自宅でも眼圧計測を簡便に安全にできれば、
(1)治療効果が評価し易くなり服薬コンプライアンスが向上する。
(2)緑内障の更なる病態解明に寄与する。
(3)眼圧を降下させる点眼薬を必要な時にだけ使用すれば医療費の削減につながる。
本機器は、眼瞼を通して眼圧を測定するため、既存眼圧計に比べ使いやすいだけでなく、圧倒的な低価格化を実現する。顧客は本機器のエンドユーザーである緑内障患者とする。ゆくゆくは血圧計のように家電量販店でも眼圧計が流通する時代を目指している。本機器はオンライン診療との親和性が極めて優れており眼圧データを医師と患者が共有できるため、オンライン緑内障診療と相性が良く、欠かせない医療機器となる。
化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌への
新規治療法の開発
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は女性に最も多い乳癌の中でも治療標的がないため、化学療法が用いられているものの抵抗性を示すと十分な治療法がないアンメットニーズの高い疾患です。
我々は1000人を超える臨床検体から網羅的に化学療法抵抗性因子を探索しペリオスチン(PN)を同定しました。生理的PNは創傷治癒作用を持ちますが、エイジングとともに各臓器の線維芽細胞で病的PNが分泌されて周辺細胞のエイジングを加速させ、臓器レベルでの機能不全を誘導します。
我々はこの生理的PNを抑制せずに病的PNのみを抑制する薬を完成させました。また、癌周辺の癌関連線維芽細胞で病的PNを抑制することは癌微小環境の悪性化を抑制し、癌細胞の上皮間葉転換を抑制することを明らかとしました。現在、2023年のTNBCへの医師主導治験を準備しております。また、老化に伴う様々な疾患で病的PNは上昇しており、2nd 3rd PLの対象と考えております。
最終審査会は以下の通り開催いたします。参加はどなたでも可能ですが、事前に登録をお願いします。
■日時:2021年10月29日(金)15:00〜17:00
■開催形式:WEBライブ配信
■審査会場・配信会場:日本橋ライブサイエンスビルディング2F 201 (東京都中央区日本橋本町2-3-11)
■スケジュール:
1.実行委員長挨拶
2.本日の進行についての説明
3.ファイナリストによるプレゼンテーション
4.特別講演「Bench to Bedside の時代から Bedside to Community の時代へ ~今、われわれが成すべきことは~」
石見 陽(いわみ よう) メドピア株式会社 代表取締役社長 CEO(医師・医学博士)
1999年に信州大学医学部を卒業し、東京女子医科大学病院循環器内科学に入局。
循環器内科医として勤務する傍ら、2004年12月にメドピア株式会社(旧、株式会社メディカル・オブリージュ)を設立。
2007年8月に医師専用コミュニティサイト「MedPeer(旧、Next Doctors)」を開設し、現在12万人の医師(国内医師の3人に1人)が参加するプラットフォームへと成長させる。2014年に東証マザーズ、2020年に東証一部に上場。
2015年より、ヘルステックにおける世界最大規模のグローバルカンファレンス「HIMSS & Health 2.0」を日本に誘致して主催。
現在も週一回の診療を継続する、現役医師兼経営者。
共著「ハグレ医者 臨床だけがキャリアじゃない!」(日経BP社)、その他「世界一受けたい授業」や「羽鳥慎一モーニングショー」など各種メディアに出演し、現場の医師の声を発信。
5.審査結果発表と各賞表彰式
大賞 100万円
学会賞 30万円
ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞 20万円
最優秀アイデア賞 15万円
アイデア賞 10万円
6.審査委員長より総評
7.閉会の挨拶